2020年宅建試験の問題14(権利関係・不動産登記法)
問題14は、不動産登記法の条文知識が問われました。
問1
不動産登記法74条2項(所有権の保存の登記)
区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
したがって、建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければなりません。
問2
不動産登記法109条1項(仮登記に基づく本登記)
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
したがって、所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、その承諾を得ることなく、申請することができません。
よって誤りです。
問3
不動産登記法21条(登記識別情報の通知)
登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない
登記識別情報の通知は、代位者に対しても、被代位者に対してもされません。
問4
不動産登記法59条(権利に関する登記の登記事項)
不動産登記法81条の2(配偶者居住権の登記の登記事項)
配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれます。
配偶者居住権とは、被相続人が死亡した時に、その配偶者が住んでいた
被相続人の居住建物にそのまま住み続けることのできる権利です。
民法では、配偶者短期居住権(民法1037条)と配偶者居住権(民法1028条)
が規定されています。
2020年宅建試験の問題12(権利関係・区分所有法)
問題12は、区分所有法の条文知識が問われました。
問1
区分所有法17条1項(共用部分の変更)
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
したがって、規約で2分の1以上の多数まで減ずることができるが誤りです。
問2
区分所有法14条1項(共用部分の持分の割合)
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
区分所有法19条(共用部分の負担及び利益収取)
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
したがって、区分所有建物の共用部分の管理等に関する費用は、
原則として、共用部分の負担として、 各共有者がその持分に応じ、
専有部分の床面積割合に従います。
問3
区分所有法18条1項
共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
したがって、共用部分の保存行為をするには、規約に別段の定めがない限り、各共有者がすることができます。
問4
区分所有法11条1項と2項(共用部分の共有関係)
1.共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2.前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
したがって、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属するが、規約で別段の定めをすることにより、区分所有者全員の共有に属するとすることもできます。
2020年宅建試験の問題12(権利関係・借地借家法・借家)
問題12は、借地借家法の条文知識が問われました。
問1
借地借家法31条(建物賃貸借の対抗力)
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
したがって、Bが甲建物の引渡しを受けているので、その後その建物について物権を取得した者に対し対抗することができます。
問2
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
よって、特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
問3
借地借家法38条5項(定期建物賃貸借)
転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、
建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
したがって、賃貸人Aではなく、賃借人Bが解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、本件契約を終了させることができます。
問4
借地借家法33条(造作買取請求権)
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに
建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。
よって、期間満了で本件契約が終了するときに、Bは、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について買取請求をすることができます。
2020年宅建試験の問題11(権利関係・借地借家法)
問題11では、借地借家法に関する出題
問1
借地借家法10条1項(借地権の対抗力)
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
したがって、甲土地の引渡しを受けていれば、甲土地を購入したCに対して借地権を主張することができるという部分が誤りです。
問2
借地借家法11条1項(地代等増減請求権)
地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う
したがって、問題中の「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた
部分が誤りです。
減額をしない旨の特約は、借地借家法11条1項に反し無効です。
借地借家法11条1項の規定が強行法規とされているからです。
(最判平15.6.12 土地賃料改定請求事件)
問3
借地人の債務不履行より土地賃貸借契約が解除された場合には、建物等買取請求権は認められません(最判昭.35.2.9 建物収去土地明渡請求)
したがって、この合意は無効となる部分が誤りです。
問4
借地借家法4条1項(借地権の更新後の期間)
当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
したがって、契約を最初に更新する場合、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となります。
2020年宅建試験の問題10(民法・時効)
問題10では、取得時効や消滅時効に関する出題
問1
民法187条1項(占有の承継)
占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
したがって、所有の意思をもって平穏かつ公然に17年間占有した後、CがBを相続し甲土地を所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有しているので○
問2
民法162条2項(所有権の取得時効)
10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
したがって、善意無過失で甲土地を買い受け、所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した後、甲土地がAの所有であることに気付いた場合、
そのままさらに7年間甲土地の占有を継続したので時効取得できる。
問3
こちらもDが占有開始時に善意無過失で所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した後、悪意のFに売却し、所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を7年間占有しているので、時効取得することができます。
問4
所有権は、消滅時効にかからないので正解です。
債権と所有権以外の財産権は、消滅時効にかかります。
2020年宅建試験の問題9(民法・売買・負担付贈与)
問題9では、民法の売買と負担付贈与の比較についてです。
正解:3
問1
民法557条1項(手付)に関する規定が出題されました
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
問2
昭和40年3月26日の最高裁判例に関する問題が出題されました
不動産の贈与契約にもとづいて該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法第五五〇条にいう履行が終わったものと解すべきである。
したがって、引渡し及び所有権移転登記の両方が終わるまではの部分が誤りです。
問3
民法551条2項(贈与者の引渡し義務等)の条文知識が問われました。
2.負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
したがって、Aは贈与者なので負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負います。
問4
民法553条(負担付贈与)の規定が出題されました。
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
したがって、Aに解除権が発生することはない。の部分が誤りです。
2020年宅建試験の問題8(民法・相続)
問題8は、相続回復請求権や子及びその代襲者等の相続権に関する条文知識が問われました。
問1
民法884(相続回復請求権)の条文そのままが出題されました
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする
問2
民法887条2項や3項の代襲相続に関する問題が出題されました
民法887条(子及びその代襲者等の相続権)
2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当(=相続欠格事由に該当)し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
3項 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(2項は代襲相続、3項は再代襲に関する規定)
したがって、さらに代襲者も死亡していたときは、代襲者の子が相続人となることはないという部分が×
問3
配偶者がおらず第1順位の子もいない場合には、第2順位の父母が相続人になります。
問4
相続開始以前に兄弟姉妹及びその子がいずれも死亡していたときは、甥や姪が相続人になりますが、甥や姪が亡くなっている場合は、甥や姪の子供は相続人になりません。
これは民法887条2項は準用されているが、同条3項は準用されていないためです。